東北大学大学院教育情報学研究部 渡部信一教授 Interview

東北大学大学院教育情報学研究部 教授

渡部 信一(わたべ・しんいち)


-渡部教授が取り組んでおられる「伝統芸能デジタル化・プロジェクト」について、その成果などを教えてください。

「伝統芸能デジタル化・プロジェクト」は2段階に分けることができます。2002年から2007年までの活動と2007年以降の活動です。2002年から2007年までは、神楽などの伝統芸能の舞を、モーションキャプチャーを活用して保存し、さらにそのデータをもとにCG化して継承支援に役立てる試みを行ってきました。八戸市の神楽士の方の協力をいただき、とても素敵な、完成度の高いモーションキャプチャーができました。神楽士の方にもその出来栄えには満足していただきましたし、継承支援にも一定の成果がありました。
しかし、それではまだ完全ではありませんでした。ご協力いただいた神楽士の方にも指摘を受けたのですが、2007年の段階でできたモーションキャプチャーは、神楽などの伝統芸能の「世界観」および師匠や神楽士の「思い」が、十分に伝わるものではなかったのです。そこで、2007年以降の活動では、その点のデジタル化に挑戦しました。神楽を舞う舞台や神楽が実際に行われる神社の境内の様子、さらには、江戸時代の八戸の街の様子などもデジタルによって表現しました。こうすることによって、デジタル化による、舞の「動き」の保存に留まらず、その背後にある「世界観」や神楽士の「思い」といったものも後世に伝えることができるようになりました。これらの活動は、拙著『日本の「わざ」をデジタルで伝える(大修館書店 2007)』にまとめたので、興味があったら読んでみて下さい。

「伝統芸能デジタル化・プロジェクト」を始めようと思ったきっかけを教えてください。

もともと私が基礎としている学問は「教育学」です。しかし私は「教育」を、一般的な「教える」という視点からではなく、「学ぶ」という視点からとらえることに関心がありました。そのようななかで注目したのが伝統芸能や民俗芸能です。日本の伝統芸能は、その継承の過程に特徴があります。師匠が弟子に対して一方的に「教える」のではなく、弟子の側から師匠の技を「学ぶ」という側面がみられるのです。
伝統芸能や民俗芸能は、非常にアナログな世界です。そのような世界に最先端のデジタルテクノロジーを持ち込むことにより、人間とテクノロジーの関係、自然とテクノロジーの関係など、さらには、教育現場にコンピュータやインターネットなどのテクノロジーを持ち込むことのメリットやデメリット、注意点を明らかにしようと思いました。そのような背景があり、「伝統芸能デジタル化・プロジェクト」をはじめました。

今後の、「伝統芸能デジタル化・プロジェクト」の展望について教えてください。

現在取り組んでいるのは、東日本大震災により被害を受けた地域の伝統芸能・民俗芸能の保護活動です。震災による人的被害や物的被害により、多くの文化財が被害をうけました。そのなかで、有形文化財は一定の保存活動が行われ、保護がなされています。一方で、無形文化財は、その性格上なかなか保存活動に至りません。そこで、いままでの、モーションキャプチャーを用いた伝統芸能・民俗芸能の保存活動で得たものを、この活動に活かすことで、それぞれの地域に昔からある無形文化財を保存していければな、と思っています。

人物紹介

渡部 信一(わたべ・しんいち)
東北大学大学院教育情報学研究部 教授、博士(教育学)。
神楽、ハワイアンフラ、中国雑伎、韓国伝統舞踊など、様々な伝統芸能や民俗芸能を対象として、モーションキャプチャを活用することにより保存・継承(教育)支援することが目的とした、「伝統芸能デジタル化・プロジェクト」に取り組んでいる。
その他にも、デジタル、日本文化などを対象に、「超デジタル化時代」の知的スタイルを提案する活動を行っている。

関連リンク: http://www.ei.tohoku.ac.jp/watabe/index.html

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