わわプロジェクト 中村政人氏インタビュー

わわプロジェクト

中村政人(なかむら・まさと)


日常のアートを意識化する

多分思ってる中の前提でアートっていうのは美術館でやったりギャラリーでやるものだと思い込んでると思いますが、もともとそうじゃないんですよ。今この瞬間にも自分が感じ取ればどこにでもアートと思えることは広がってる。それを意識化できない、気がつかないっていうことが問題で、無名のものでも有名なものでも、日常的にあるものだと思う。
自然の現象、光の現象、風景だったり、そこで出会った人の会話の中にあるかもしれない。それは気づく側の力があるかないかの問題です。
絵や、デザインができるってことだけが創造的なことじゃなくて、自分がクリエイティブになる、創造的になるってことが大事でしょ。自ら発想し、始めた活動っていうのは日常いっぱいある。ただ、クリエイティブになれない人たちっていうのは、何か問題が起きたときに、それを超えようとする新しいアイディアだとか、新しい技術だとかがなかなか起きてこない。そこが問題なだけであって、別にアートという言葉を使う必要すらないんだよ。


アートをつくる3つのキーワード

最近よく言うのが3つのキーワードで、「純粋」であり「切実」であり、かつその2つの気持ちをもった人がずっと活動を続けることによってある「逸脱」を促すっていうこと。
人間っていうのはいろんな気持ちがあるはずだけど、その中でも純粋になれる時っていうのが非常に人間的であると思う。被災地で、いろんな人にインタビューしてるけれども、極限的に生死をさまよって、そこから何もないところからものをつくり出してる人たちはものすごく純粋。そこまで追い込まれたからかもしれない。あともaう一つ「切実」っていう思い。これは震災以降本当に思ったことで、自分たちが生きていくことを確かめる切実な思いが、人の力になる。限りなく自分の生き方や思いに対して純粋だと、自分が作りたいことに対して切実になれるテーマ性があったり、環境だったり、技術だったりが複合的に集まってくる。そのことを続けていくことの中で、純粋であり切実な思いが、何か一つ形としてとびぬける、ある種超える瞬間が出てきます。それを僕は逸脱と言っています。
この3つの条件をチェックすれば、本物かどうかは分かる。震災復興の活動でも、自分が純粋になれる方法、自分が切実にその活動をやれるかどうか、この2つの条件がそろうような形でプログラムが組まれれば、これが本質的に持続性がある活動に変わる。日常の社会的な問題を、本当に超えていく瞬間がやってくる。



震災から始まったネットワーク ーわわプロジェクトー

ぼくらはネットワークをベースにしてものをつくっているので、日頃のクリエイティブなネットワークっていうのが、ある瞬間に危機管理や助け合いのネットワークになるんですよ。それを今回ものすごく思ったので、今もその活動を続けています。わわプロジェクトはクリエイティブな人たちの、震災から始まったネットワークをつくることであり、またそういった人たちができるだけ動きやすいプラットフォームを開発することでもあり、そのプラットフォームそのものが次にくる震災の危機管理になるものにしたい。あるクリエイターの人たちが言っていたのは、「震災は終わらない」、と。これで話が終わった訳じゃなくて、次の始まりだろうし。より深く、このことを考えていかないといけないし、実際行動する必要があるなと思ってやっています。



東北に住まう人には東北ならではの生き方がある

今回感じたのが、自然と共生する形式が本当に必要なんだということ。例えばすごく山奥に行くと、街の便利な生活と違って、極端に自給自足率が高まる。それはある種、自然の恵みを豊かに得ながら、そこで共生する意識がなければ生きていけないということ。そういう当たり前なんだけど、ある適正な規模で、自然とバランスを取ったりする必要があって、その感覚というのは今後すごく必要になってくる大事な意識だと思う。東北っていうキーワードの中で、四季が明快で、冬の厳しさもある中で自然と共生していくという生活習慣、自然観、または山岳信仰を含めた、山や自然への感謝という意味での宗教観、それらの意味が問われるべきです。その中で、社会というのはもう一度組み立てられる必要があると思う。しかし、またいつの間にか元通りの生活に戻ってしまうという感じもあり、新しい意識を芽生えさせなきゃいけないと。東北というのは、そういう意味で震災を抱え、これから長い時間をかけて復興していくわけだけど、そこでの新しい社会への提案というのは実現されるべきです。良い考えをみんなで社会実験し、共有し、コミュニティの形を見出していかなくてはいけません。


プロジェクト紹介

わわプロジェクト
東日本大震災復興支援のための文化的・社会的プラットフォームを目指して起動した「わわプロジェクト」。
アートセンター「3331 Arts Chiyoda」を拠点とし、創造の力を支援につなぐことを目的としている。
本書は、70の支援プロジェクト紹介、1年以上にわたり継続取材をしてきた現地の人々のインタビュー、4名の写真家(畠山直哉/佐藤ジン/細川剛/宇宙大使☆スター)による写真を収録。東日本大震災を機に私たちに問われている創造力と決断力。彼らの姿から私たち人間の創造力と表現の本質が見えてくる。

関連リンク:http://book.wawa.or.jp/

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